ROKUGO BASE Magazine

【スタッフインタビュー】「自分で歩めるようになるために」起業家と向き合い伴走する、インキュベーションマネージャー
新たな事業に挑戦する起業家や起業希望者、中小企業の方など、さまざまなビジネスに取り組む方が入居する施設が六郷BASEです。ただオフィスを提供するわけではなく、みなさんが安心して事業を前進させられるよう、数々の支援体制を整えています。
今回は、中でも専門的な知識でみなさんをサポートする「インキュベーションマネージャー」をご紹介。事業内容やフェーズが異なる入居者それぞれに寄り添った伴走型の面談や、事業をしっかりと伸ばしていくための情報提供など、より具体的な支援をおこなう役割を担っています。
日々、どのような内容や気持ちでサポートに取り組んでいるのか、インキュベーションマネージャーの佐藤 泰予にインタビューしました。
伴走型の面談で“悩み”の把握と解決へ
——本日はよろしくお願いします!まず最初に、インキュベーションマネージャー(以下、IM)の重要な業務である「定期面談」について改めて教えてください。
六郷BASEでは、オフィス会員とシェアード会員は月に一度、コワーキング会員は3ヶ月に一度の定期面談があります。さまざまな領域のビジネスやキャリア支援などの専門知識を持った複数のIMが持ち回りで面談を担当していて、そのときのタイムリーな相談に乗る時間になっています。
——具体的には、どのような相談がありますか。
入居者さんの事業のフェーズによってさまざまですが、例えば、「お客様を見つけるのが難しい」という相談であれば、商品やサービスのターゲットを整理しながら、市場開拓を一緒に考えます。「お客様のところへ営業に行くことが決まりました」という方には、よりよい商談へつながりやすい伝え方やストーリーを作ることもあります。
——しっかりと事業内容を把握しているからこそ、一緒に考えることができますよね。
六郷BASEは大田区にある施設なので、製造業を生業にする入居者さんも多いんです。そのため、「部品を作ってくれる工場を探している」という具体的なご相談もありますね。そういう時は、大田区の工場の情報が集まる産業振興協会の窓口をご案内したり、展示会の情報などをお伝えしたりしています。

——多岐に渡る内容に対応する面談のなかで、泰予さんが大切にしていることは何ですか。
私が大事にしているのは、“課題や悩みを聞く時間を確保する”こと。現状報告が主になると、入居者さんにとってはあまり意味のないものになってしまいます。それよりも「今、どこに困っているのか」をしっかりと聞き、その付随情報として現状を聞くような進め方をしています。
——たしかに「悩みを聞いてもらう前に終わってしまった」となると、せっかくの面談が少し物足りなく感じてしまうかもしれませんね。
抱えている課題に対して、一つでもいいので「次はこれをやってみよう」というものが見つかるといいですよね。そうすると、次の面談では「できた・できなかった」などのステップに進みやすく、事業を進めていくことができます。
——課題を聞く時間を確保するための工夫を教えてください。
面談時には入居者さんに「カルテ」というものを記入していただいています。現状や抱えている課題、それにどのようなアクションを取ったかなどを事前に共有していただいた上で、私たちも準備して面談に臨んでいます。
——“面談”と聞くと、「しっかり報告しなければいけない」「厳しく指導されるのでは」といったイメージで緊張する方もいるかと思います。六郷BASEの面談は、どのような雰囲気だと感じますか。
雑談から始まる穏やかなものが多いと思います。雑談からも入居者さんの近況を知ることができますし、なにより、リラックスして話してもらえるように意識しています。特に、初回の面談は緊張される方が多いので、定期面談の目的や体制などをしっかりと説明して安心してもらえる場作りを心がけています。

事業を進める“仲間”として、活用できる制度の紹介
——大田区産業振興協会の他に、制度活用の具体的な支援があれば、教えてください。
例えば、これから起業するという方には、特定創業支援事業という制度をご紹介しています。これは各自治体に相談した上で法人設立をすると優遇を受けられるものです。そのほかにも、助成金やアクセラレーションプログラムなどの情報はインプットしているため、対象となる方には随時ご案内しています。
——以前、マガジンでご紹介した入居者も「助成金などの情報がもらえたことが助かった」と言っていましたよね。
こういった制度やプログラムは、自分が対象になるものを探し出すだけでも大変だったり、情報を集めるのに時間がかかったりしますよね。六郷BASEでは、IMだけでなくコミュニティマネージャー(CM)もそういった情報を常に集めています。私たちが面談でしっかりと事業の現状を把握することで、より入居者のみなさんに合った制度をご紹介できたらと思っています。
——泰予さんはキャリアコンサルタントの資格も持つ支援のプロなので、とても心強い存在だと思います。入居者のみなさんにとって、どのような存在を目指していますか。
“応援してくれる味方”だと思ってもらえたらいいなと業務に当たっています。私たちIMはアドバイザーや批評家ではなく、同じ目線で事業を進めていく仲間の一人と認識してもらいたいです。もちろん、起業や経営に関してこちらが持っている情報はお伝えしながら、入居者のみなさんの選択肢を増やしていきたいと考えています。

「誰に話してもちゃんと通じる」ための支援検討会
——六郷BASEの面談は、数人いるIMが持ち回りで担当するので、引継ぎも大切ですよね。
基本的には、面談ごとの「カルテ」で一箇所に情報を集約し、職員間で共有しています。面談内容はもちろん、IMが感じていることや、今後ご紹介したい情報なども書き込んでいます。
——まさに病院の「カルテ」のようですね。
加えて、週に一度、IMとCMで集まって支援検討会もおこなっています。IMが面談した内容がしっかりと全員に行き渡ることが目的で、細かい部分も含めて伝えることが目的です。
入居者さんがせっかく話してくださったことを、次の面談で別のIMに改めて説明しなければいけないのは、時間ももったいないですし、信頼関係を築くうえでもよくありません。CMも含めて全員が同じ情報を共有しておくことで、先ほど話に出た制度活用なども含め支援できる内容が増えると考えています。


自分で歩んでいける状態を目指して
——支援検討会のほかに、スムーズな面談のために日々意識していることはありますか。
六郷BASE内で入居者のみなさんにお会いしたら、積極的に声をかけるようにしています。例えば、面談のときに「来週は商談があるんです」「今度、この展示会に出ます」といった話があれば、次にお会いしたときに「商談はどうでしたか?」「展示会の準備、進んでいますか?」などと声をかけることが多いです。
——面談のときだけでなく、心はずっと伴走しているんですね。
仕事以外の時間でも、なにか情報をキャッチすると「あの人に合いそう」と入居者さんの顔が浮かんだりもします。単発で支援するのではなく、入居している3年間ずっと伴走するため、一緒に事業を作っていく気持ちで入居者さんにもサービスや商品にも愛着を持つんですよね。


——六郷BASEはインキュベーション施設なので、入居期間が3年と決まっています。泰予さんはこれまで何社くらいの方々を見送ってきましたか。
IMになったのは昨年からですが、この施設の立ち上げ時から職員として勤務しているため、20社以上は卒業を見届けました。入居時には開業すらしていなかった方が、3年のあいだに会社を設立し、卒業後も販路を開拓している様子を見ると、今でもとても誇らしくなります。入居者さんから「メディアに出た」「受注が取れた」などの良い報告をもらうときが、IMとして一番嬉しい瞬間です。
——最後に、泰予さんがどのような気持ちでIMのお仕事をしているのか、教えてください。
入居者のみなさんに「自信を持って歩んでいけるようになってほしい」と思いながら、仕事をしています。ここを卒業したときには、自分自身で必要な情報やつながりを持てる状態になってほしい。「自分はもう事業をやっていける」と歩んでいける状態を目指して、伴走していきたいと思っています。
——開業前後でわからないことも多い起業家のみなさんにとって、頼もしい存在ですね。ありがとうございました!

<佐藤 泰予>
大学卒業後、IT企業でシステムエンジニアとして活躍。その後、人事部で新入社員研修の講師として研修企画を担当する。キャリアコンサルタントの資格を活かし、個人のキャリア支援や子ども向けキャリア教育事業を並行して遂行。現在はインキュベーションマネージャーとして、六郷BASEで起業家の相談対応やビジネスマッチングを行う。

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