六郷BASE

大田区南六郷創業支援施設

ROKUGO BASE Magazine

【起業家インタビュー】乗り物の持つ可能性を信じて、宇宙へ。/株式会社SUIHO SPACE INNOVATIONS・柚沢 誠さん

REPORT
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「大田区(ココ)でつながり、ともに進もう」というキャッチコピーを掲げ、歩みを進めてきた六郷BASE。大田区にあるさまざまな資源と六郷BASEに入居する起業家が、つながることで相乗効果を生み、事業が前に進んでいく——。そのような事例をご紹介していくのが、六郷BASEの入居者へのインタビュー連載です。

今回お話を伺ったのは、ロケットエンジンに使われる部品の製造と販売、技術コンサルティングなどの総合開発支援をおこなう、株式会社SUIHO SPACE INNOVATIONS代表の柚沢誠さんです。20年以上のキャリアのなかで自動車や飛行機など乗り物全般に携わってきた柚沢さん。ロケット産業で起業した理由と、その先に描く未来について伺いました。

乗り物と流れていく景色が好きだった

——ご出身は石川県とのことですが、地元を出られたのはいつ頃でしょうか?

高校までは地元の金沢にいて、地元を出たのは大学進学のときです。アメリカの大学で機械工学を学ぶために留学しました。東京に出たのは、社会人になってからです。

——大学生の時からアメリカにいたんですね!なぜ機械工学を?

もともと父が車の修理屋だったこともあって、自動車やバイクはもちろん電車や飛行機など、乗り物全般がとても好きでした。自分で運転したり乗ったりして、景色がどんどん流れていくのが気持ちいいなと思っていたこともあって、自分が作る側になりたいと思うのは、僕にとって自然なことでした。日本に比べて車社会が発達し、有名な企業もたくさんあるアメリカで勉強してみたいなと思い、進学しました。

——アメリカだと、日本とは違う乗り物にも出会えそうですね。

そうですね。アメリカでは自動車よりも先に飛行機の免許を取って、セスナに友達を乗せて飛んだりもしていたんですよ。5年ほどの滞在中に、自転車競技に出会ったり、『学生フォーミュラ』という大会で自作の車を作ってレースしたり……楽しかったですね。大人になってからは、バックパッカーとしてヨーロッパを電車で回ったりもしました。

——とにかく乗り物と共にある人生という感じですね!就職も、やはり乗り物関連でしょうか?

最初は、レーシングカー関連の会社でエンジンの図面を描く仕事をしていました。その後も何度か転職しましたが、基本的にはずっと乗り物関係です。図面を書くだけでなく、自分で手を動かして車を触ったり、ソフトウェアを使った自動運転の業務に就いていた時期もあります。

人々が宇宙に行ける“道筋”を作りたい

——幅広く乗り物関連のお仕事をされてきたなかで、ロケット産業で起業した経緯も教えてください。

10年ほど前から、宇宙に興味を持ち始めました。特に大きなきっかけがあったわけではないのですが、キャリアを通して身近な乗り物全般の知識や経験がついたので、自分にとって遠い存在だったロケットにも活かすことができたらと考えるようになったんです。前職での社内起業制度を利用して、現在の前身となるロケット事業を企画したのが始まりです。

——さまざまな乗り物に関わった末での、次のステップが宇宙だったのですね。

日本としても製造業の次の一手として、ロボットや宇宙に関心を寄せています。そういった社会の追い風になればという思いもあり、会社を飛び出して起業したんです。

——柚沢さんご自身が宇宙に行ってみたい、という思いも強いのですか?

それは、もちろんあります。ただ、どちらかと言えば「多くの人が行けるようになるといいな」という気持ちのほうが先行していますね。僕はキャリアを通して、みんながもっと移動しやすくなるために乗り物を良くしたい、という思いがあるんです。

——「良くしたい」というのは?

乗り物は結局、人が移動するためのもの。それが速くなったり安くなったりすれば、みんないろいろな場所に行きやすくなりますよね。今もまだまだ海外旅行は敷居が高いですが、飛行機が発達して時間的・金銭的な負担が減れば、みんなもっと出かけたくなるはず。宇宙も同じで、今は何十億というお金を払って宇宙にやっと行ける人はいますけど、もっとロケットが身近な乗り物になれば、みんなが人生に一度くらいは宇宙に行けるかもしれない。

社名の「SUIHO」は、日本地図を作った伊能忠敬の呼び名なんです。彼は50代になってから地図を作り始めたんですけど、その際に天文学を使って星の位置を確認しながら歩く「推歩」という技術を活用していたと言われています。宇宙に思いを馳せた伊能忠敬への尊敬とともに、彼のようにまだ見ぬ場所への道筋を作る仕事がしたい、と名付けました。

——そんな想いが込められた社名だったのですね。宇宙旅行に手が届く未来にワクワクします。

エンジニアが育つ、職人たちとの距離感

——2024年11月に設立されてから、12月に六郷BASEに入居しています。どうして六郷BASEを選んでくださったんでしょう?

一番の理由は、まわりに製造業の工場がたくさんあるからです。今はインターネットですぐに依頼できる時代にはなっていますけど、僕は製造業者さんの近くにいることが非常に重要だと思っています。職人さんたちと直接お会いしてやり取りできることは、設計者としてすごく成長するし、助けになるんですよ。

——大田区が「ものづくりのまち」だからこそ、ですね。実際にSUIHO SPACE INNOVATIONSの製品は大田区で作られているんですか?

そうですね。一度探して難しいもの以外は、基本的にはこの辺りでの依頼を優先しています。先ほど「エンジニアが成長する」と言ったように、距離感が近いと依頼しやすいだけでなく「これでは作れない」といった指摘ももらいやすく、設計者としての力もつくのでありがたいです。

——六郷BASEとしても、地元の町工場とつながってもらえるのはとても嬉しいです。

月に一度の面談だけでなく、町工場や業者さんとも積極的につないでくれるので感謝しています。「もう少し大きなオフィスを借りたい」と相談したときにも、いくつか探してくださった上に、一緒に見学まで来てくれて驚きました。

——SUIHO SPACE INNOVATIONSは、大田区の町工場に部屋を借りたり、福島県の南相馬市の自治体と連携して拠点を持ったり、さまざまな角度で活躍の場が広がっているのも印象的です。

ロケットエンジンの開発は広いスペースが必要なので、さまざまな方と連携しながら進めています。一方、資金調達なども考えると、やはり都会から離れすぎてはいけない。六郷BASEは田舎すぎず都会すぎず、ほどよい立地だと思っています。

協力してロケットが作れたら、もっと多くの“出会い”が生まれる

——最後に、SUIHO SPACE INNOVATIONSが目指している未来についても、伺いたいです。

宇宙やロケットの産業構造を少しでも変えていきたい、という思いがあります。この業界は少し特殊で、アメリカとソ連がロケット開発で競っていた時代を引きずって、いまだに“国同士の勝負”という雰囲気があるんですね。ミサイルの開発に転用できてしまう技術だからこそ、なかなか国や企業の枠を超えて技術をシェアしない風潮があります。僕は、そこを変えていかなきゃいけないと思っているんです。

——そんな構造になっているとは、知りませんでした。

だから、ロケット産業はまだすごく“縦割り”です。各社が部品からすべて自分たちで設計・製造している状態なので、時間やコストがかかっています。自動車産業も以前はそうだったのですが、徐々にタイヤや部品それぞれのメーカーが現れて、自動車が早く安く作れるようになっていったという背景があるんですね。

——では、柚沢さんのように「ロケットのエンジン部品を作って売る」という形態の企業はかなり珍しいんですね。

今はまだそうです。弊社が担うエンジン部分以外は各社が作らなければいけない。今後はいろいろな部品をいろいろな会社が作れるようになったらいいと思います。そうすれば、ロケットを飛ばす企業はもっと機体開発やサービスに集中できます。日本の製造業技術は世界的に認められているので、ロケット業界においても強みになることを示したいですね。国や会社がもっと横断的に協力して、結果的に産業が良くなり、宇宙が多くの人の手に届くものになればいいなと思います。

——柚沢さんは、どうしてそこまで「みんなが移動できたらいい」と思うんでしょう?

僕自身、海外に住んだり旅行が好きだったりして、よく移動してきたんですよね。行く先々でいろいろな文化に触れ、いろいろな人に関わり、体験をして、初めて気がつくことがありました。新しい出会いは、人生の経験も生活の幅も広げるし、考え方もちょっとずつ変わっていくのがいいなって。みなさんの、そういう出会いを増やしたいというのが一番根っこにあるのかもしれません。

——さまざまな場所で、多くの人と出会ってきた柚沢さんならではの視点だなと思いました。宇宙が身近になる未来、楽しみにしています!ありがとうございました!


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