ROKUGO BASE Magazine
【起業家インタビュー】「役に立ちたい」の思いを込めた一品物の自動化装置/ワンエフテック株式会社・福井 一永さん
「大田区(ココ)でつながり、ともに進もう」というキャッチコピーを掲げ、歩みを進めてきた六郷BASE。大田区にあるさまざまな資源と六郷BASEに入居する起業家が、つながることで相乗効果を生み、事業が前に進んでいく——。そのような事例をご紹介していくのが、六郷BASEの入居者へのインタビュー連載です。
今回お話を伺ったのは、ワンエフテック株式会社の福井 一永さん。工場などに導入する自動化省力装置を設計し、製作・設置までを請け負っています。人手不足の製造業の一助となり、業界全体に勢いを取り戻したい。そう考える福井さんが、人々の困り事に応えることで感じるやりがいと、目指す未来について伺いました。
“一品物”の装置で、製造業を盛り上げたい
——最初に、ワンエフテックが設計・製作をおこなう「自動化省力装置」について教えてください。一体、どのようなものなのでしょう?
世の中には「運ぶ」「貼る」「切る」「つぶす」など、いろいろな機能を持った機械があります。それらを対象の商品や目的に沿って組み合わせながら、お客さんの「この商品を、こう動かしたい」を叶えるのが、僕たちがやっていることです。
例えば、ペットボトルにフィルムを貼るのであれば、それ専用の機械を作っている業者さんがたくさんいるんですね。でも、お客さんによっては商品の形もサイズもバラバラ。ピッタリのサイズ感や特殊な動きが必要な場合は、オリジナルで機械を作る必要があるんです。
——たしかに、「運んで箱詰めする」だけでも、商品の形状や大きさ、重さなどによって必要な動きが違いますよね。
カスタマイズ性が高いので、量産されている機械では賄えない部分を僕らが担う形です。お客さんの需要を聞いて、コンベアやモーターなどの既製品を組み合わせながらオーダーメイドで「一品物の装置」を作ります。大量に必要ではないけれど、「ないと困る」または「あると便利」な装置を作る、ニッチな仕事ですね。

——今までに、どのような装置を作ってきましたか?
例えば、「袋の中の麺を寄せる」という機械。冷やし中華やラーメンなどの袋麺を包装する際に、規定の位置に麺がないとパウチではさんだ時に巻き込まれて不良品になってしまうんです。僕らが自動化するまでは、人の手で袋の中の麺を寄せる作業をしていました。
——人の手でやっていたんですね!
1分間に90袋も流れてくるものを、ずっと手で。他にも、例えばケーキを大きな刃で切り続けて腱鞘炎になってしまう人がいたり、お弁当の上に具を乗せるだけの作業を1日中やっている人がいたりします。僕は、それらを自動化できたら、企業や働く人にとっていいんじゃないかなと思っているんです。
——自動化することで、どのようなメリットがあると考えているんですか?
自動化することで、人間はもっと“複合的”な仕事ができます。余った人手を営業や生産管理、品質の向上など、その企業が必要だと思う部分に回してもらえるのではと考えています。人手不足が深刻な製造業において、今はその余力がない状態の企業が多いと感じているので、自動化で余力を作れたらいいな、と。その先に、日本の製造業がもっと明るくなる未来があると信じて、仕事をしています。
「役に立てている」という実感を大事に
——起業される前、福井さんはどのようなお仕事をされていたんですか?
ずっと電気機器メーカーで、センサー機器の営業をしていました。営業先の工場に出入りする中でさまざまな需要があることがわかったことが、今の事業につながっています。当時のお客さんの中には自動化装置を作れるメーカーさんもたくさんいたので、彼らに発注して売るということを仕事の一貫として始めました。
——会社員として働くなかで、自らの仕事を作っていったような形なんですね。
商社部門だったので、作ってもらった装置を仕入れて販売することは可能でした。実際に始めてみると、お客さんの困り事が解決して喜んでもらえることが多く、「役に立っている」という実感とおもしろさを感じましたね。社員として動ける範囲に限りがあったこともあり、独立したのが起業の経緯です。
——実際に起業されてみて、どうでしたか?
それまではやはり会社の看板やつながりがあって依頼が多かったのですが、改めてゼロの状態から仕事を請け負っていくのは大変でした。しかも、作ってもらった装置を仕入れて販売するだけでは、そこまで利益も伸びず……もう自分で作るか、と。
——その装置自体を、ですか?
そもそも既成の装置を依頼に合わせて組み合わせる形だったのでゼロから作るわけではないですが、設計や組み立て、プログラミングなどは自分でできるように勉強しました。ただ、今まで営業として身近に見ていても、いざ自分でやるのは難しくて……。起業して半年ほどは、これまで関係のあった工場を手伝いながら教えてもらい、徐々に自分でできるようになっていきましたね。

——ご自身で設計・製作できるようになり、どのような変化がありましたか?
利益が増えたのはもちろんですが、やはり「役に立っている」という実感が増しました。予算の中でクオリティに妥協せず、自分で納得いくものを納品して、ちゃんと喜んでもらえるのが一番嬉しいです。
——これまでで「特に喜ばれた」というものはありますか?
基本的にはみなさん喜んでくれるんですけど、特に他社ではあまり受けてもらえない「既存の機械の改良」が喜ばれますね。本来は、他の人が作った昔の機械はよくわからないので触りたくない会社が多いんです。でも、お客さんからしたら今ある不便をちょっと変えてもらえるだけでも嬉しいし、そこは僕が勉強すればいい。現場で「ここが困ってて……」という声をヒアリングしながら、改良の提案をできるのが僕自身も楽しいです。
困っている人がいたら、できることを考えたい
——六郷BASEの入居のきっかけは何でしたか?
もともと六郷BASEにいた、サンエステック株式会社のみなさんの影響です。前職のときに関係のあったメーカーから独立したサンエステックが成功しているのを見て、僕自身も安心して独立できた部分があります。同じ業種なので、人手が足りないときに手伝うなど協力し合う関係です。
——とてもいい関係ですね。
サンエステックが駆け出しの頃、僕はまだ会社員をしていたので彼らの商品を仕入れたりもしていて。そういった助け合う関係があったので、僕が独立するときにもいろいろアドバイスをくれました。「Sがつく3人で『サンエステック』だけど、福井さんはFが1人で『ワンエフテック』だ」と名付けてくれたのも彼らです(笑)。

——実際に大田区や六郷BASEでの活動はいかがでしたか?
やはり大田区はものづくりに明るいので、補助や助成も多くありがたいことが多いです。また、「大田区」というだけで周りからのイメージもよく、大田区の加工業者さんと話すときも打ち解けやすいのが嬉しいですね。今はいい物件が見つからず区外に自社工場を持っていますが、ゆくゆくは大田区でも製作できるようになりたいと思っています。
——ワンエフテックは、六郷BASE内でも他の入居者さんとよく仕事の話をしている印象があります。
六郷BASEには、ものづくりに関わる企業が多いので、ワンエフテックとしてできることが何かしらあるんですよね。単純におしゃべりが好きというのもあるんですけど(笑)、何か困り事があると聞くと「うちでできるよ」と言いたくなっちゃうんです。
——今まで、どんなお話があったんですか?
例えば、株式会社Nudesignのパラグライダーエンジンの性能試験用の機械ですね。測りたい性能が決まっていたので、そこの計測ができるような装置を作りました。あとは、株式会社ウエストヴィレッジが運営する古着屋さんが大量に抱えている洋服の在庫を圧縮させる装置を検討したこともありました。
——内容が幅広いですね。
僕らもまだ起業したばかりなので、とりあえず「ノーと言わない」と決めていて。業種や内容にこだわらず、「困っている」と言われたらまずは調べて、僕らにできることがないかを考えるようにしています。
努力が報われる会社をつくりたい
——ワンエフテックは2026年3月で六郷BASEを卒業されて、次のフェーズに行かれます。今後の展望も聞かせてもらえますか?
製造業では機械を使った自動化が浸透してきましたが、業界によってはほとんど知られていないと思います。六郷BASEで他業種の方々と話して「こんなことができるんじゃないか?」と提案できたように、みなさんの悩みを技術で解決できることが、きっとたくさんあるはずです。もっと他業種との関わりを増やしながら、チャンスを見つけていきたいと思います。
——特に気になっている業界はありますか?
僕はとにかく人の役に立ちたいと思っているので、農業など衣食住に関わる部分はやってみたいですね。もちろんその他にも、困っている人がいればできることを考えたいです。
——まだまだ可能性が広がっていますね。最後に、福井さんの夢や目標を教えてください。
僕はワンエフテックを「頑張ったら頑張っただけ、その人がちゃんと対価を受け取れる会社」にしていきたいんですよね。みんなが自分の得意な場所で、やる気を出して働ける環境を作りたいと思っています。まだまだ夢物語ではありますが、「あの会社ができているなら、できるはず」というモデルケースになれたら嬉しいですね。
——ワンエフテックのみなさんがやる気を持って頑張れば、製造業やそこで働く人たちも盛り上がっていき、いい循環が生まれそうですね。
個人としても、誰かの暮らしの役に立つような動きをしていきたいと思っています。今、製造業だけでなく日本全体に閉塞感があるように感じていて……。以前のような、もっと楽しくて勢いがあった社会にしていけるような働きをしていきたいです。
——卒業後の動きも楽しみにしています!ありがとうございました!


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