六郷BASE

大田区南六郷創業支援施設

ROKUGO BASE Magazine

【起業家インタビュー】町工場に寄り添いながら、もっとワクワクする場所へ。/株式会社Manufac・増井 杏奈さん

REPORT
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「大田区(ココ)でつながり、ともに進もう」というキャッチコピーを掲げ、歩みを進めてきた六郷BASE。大田区にあるさまざまな資源と六郷BASEに入居する起業家が、つながることで相乗効果を生み、事業が前に進んでいく——。そのような事例をご紹介していくのが、六郷BASEの入居者へのインタビュー連載です。

今回は町工場の製品開発や採用をサポートする株式会社Manufac(マニュファク)の増井杏奈さんにお話を伺いました。「町工場のために仕事をしたい」と前職を辞めて起業した増井さんの町工場への思いは、どこからやってくるのでしょうか。好奇心を原動力に突き進んできた、これまでの歩みを伺います。

町工場と二人三脚で歩む“伴走型”

——まず、株式会社Manufacの事業内容について、教えてください。

現在は、製造業向けに「自社商品開発」と「採用」のサポートをおこなっています。町工場などの製造業では、開発や採用の専任スタッフがおらず、少人数もしくは社長さんがひとりで担っていることが多い部分です。そうすると、やはり忙しくて何もできなくて、なかなか結果につながらない……。私たちはそこに入って、開発や採用のノウハウを“一緒に”立ち上げていく役割です。

——代わりに採用活動を請け負うわけではないんですね。

「伴走型」の支援であることを大事にしていますね。社員のみなさんと一緒にアイデアを考えたり、ノウハウや仕組みを構築したりして、最終的には社内で自走できるようになることを目指しています。

——基本的に受注業務の多い町工場で、自社商品の開発にはどのようなニーズがあるのですか?

お問合せ内容はさまざまですが、多いのは「展示会で技術力を見せられる商品がほしい」というもの。おっしゃるとおり、町工場は受注業務がメインで回っているので、To C向けの商品で手いっぱいになってしまっては困るという声もあります。一緒に商品開発をする際には、技術力が伝わって引き合いにつながる、PRするための商品を作ることが多いです。

——製造業や町工場の現状を理解しているからこその伴走だなと思いました。これまではどういったものを作ってきましたか?

これまで大田区の町工場さんと作ったのは、花瓶やメガネケースなど。私たちはプロダクトデザイナーなどの専門家と一緒に入り、数年間かけて自社商品の企画から体制作り、販売まで伴走します。ただ、私たちが外からアイデアを持っていくのではなく、できるだけ社内から出るアイデアをブラッシュアップして「社員さんが考えた」という部分を大事にしています。

——採用活動には、どのように伴走するんでしょう?

製造業はずっと人手不足だと言われていて、町工場でもみなさん「集まらない」とおっしゃいます。でも、それ以前に採用活動をする余裕やノウハウがないように思うんですね。高校や職業訓練校に訪問する時間が取れなかったり、採用のための資料が準備できていなかったり……。自社に合いそうな子はどこにいるのか、どうやって会社の情報を届けるか。そういった土台作りをまず、一緒にやっていきます。

——自分たちのことは、中からだとわからない部分もあると思うので、心強いですね。

大きな就活イベントに出展するだけでは、なかなか採用にはつながりません。高校や職業訓練校の方々とおつなぎしてコネクションを作るなど、割と泥臭くて、地道な業務です。

町工場を身近にする、プロデュース側の仕事

——増井さんはもともと、金型メーカーで研究職と事業開発をおこなわれていたと伺いました。今のお仕事にも通ずる部分があるのかなと思いますが、いかがですか?

そうですね。図面が読めたり、材質や工程が一通りわかったり、町工場のみなさんの話が理解できるのは、前職での経験が活かされていると感じます。商品開発も採用も、製造業は特殊な部分があるので、やりがいはありますね。

——そもそも、なぜ前職を辞めて起業されたのでしょう?

町工場に対して思い入れ、というか「彼らと一緒に何かしたい」という思いが強かったからかもしれません。実家がバフ研磨の工場を経営しているので、もともと町工場に対して親しみがあったんです。一方で、町工場が抱える「技術はあるのに稼げない」「閉鎖的になりがち」などの課題も身近にありました。前職の事業開発の仕事では町工場と関わる事業を考えることも多かったのですが、当たり前ですが、どうしても「自社のため」であって、「町工場のため」の事業ではなかった。自分で事業を考えれば考えるほど、「私は町工場のために仕事がしたい」という思いが浮き彫りになって、会社を辞めました。

——町工場のために働きたい、という思いが強くなって。

もっと町工場に光を当てて、親しみのあるものにしたいんです。例えば、ヨーロッパでは工場で働くことが割とランクの高い仕事とされています。あえて工場内が見えるようなガラス張りになっていたり、「なりたい職業」として選ばれていたり。仕方がないから工場で働くのではなく、「なりたい」と思われる世界観があってもいいんじゃないかなと。日本の町工場も、もっとオープンに誰でも入って行きやすい環境にできないかな、というところが原点かもしれません。

——業界全体の雰囲気を変えていきたい、という思いがあるんですね。

そうですね。実家の町工場を継ぐという選択肢もありましたが、やっぱり「製造業を身近な存在にしたい」「もっと憧れられる職業に」という目的を叶えるのは難しいなと思っていました。自分自身が職人になるよりは、プロデュースする側に回るのがいいのではないかな、と。

まるで“家族”のような町工場の人たちのために

——起業してすぐに六郷BASEに入居されたんですか?

最初は別の施設にいましたが、人からの紹介で六郷BASEを知りました。もともと大田区のお客様が多かったので、近い方がいいんじゃないかと。実際に大田区に来てみると、町全体が「ものづくりの町」として力を入れているのを感じますね。大型のショッピングモールで町工場が出店するイベントなどがあって、とてもいいなと思います。展示会でお客様とのご縁があったり、支援先からのご紹介で新しい取引につながったりすることも多いので、大田区に来てよかったなと思いますね。

——町工場のみなさんは、横のつながりが強い印象がありますね。

本当にそうですね。いろいろな場所に連れて行ったり呼んでくださったりして、いい意味でのお節介な感じがありがたいです。起業当初から、町工場のみなさんに“育ててもらっている”というところはあるかもしれません。数年前に出産したのですが、その時は付き合いの長いお客様から出産祝いをいただいて「子どもを連れて遊びにおいで」と言ってもらったりして。頼り甲斐のある、「家族」みたいな方々がすごく多いんです。

——良い関係ですね!増井さんの町工場への愛が伝わっているからこそかなと思いました。今後の展望についても、教えてもらえますか?

町工場のサポート事業をやってきて思うのは、「システム化はできない」ということなんです。それぞれが必要としていることをサポートするのは、統一したシステムにはできないなって……。さらに、商品開発も採用も財務も、いろいろなことが全部つながってくるから「一部だけしかやりません」というのも難しい。もっと困り事に対して「なんとかする方法を一緒に考えましょう」と言う、人情味のある伴走を、今後もやっていきたいなと思っています。

——とても大変そうですけど、町工場にとっては心強い存在だと思います。

ただ、それだと正直、会社としては労働集約型になってしまってスケールしづらいという課題もあります。稼ぐというより、「私がしたいから」という感じなんですね。今、実はその課題に向き合う別の事業にも取り組み始めているんです。

中にいる人が楽しむほどに、人は集まってくる

——新しい事業のことも、ぜひ教えてください。

「LocPic(ロックピック)」という、マップ型の体験共有プラットフォームです。マップ上に、“現在起きていること”がタイムリーに表示されて情報が得られるアプリを開発しています。そちらは製造業サービスとは別の事業として、2025年10月にプレリリース、今は試験的に活用が始まっています。

——LocPicを開発してみようと思ったきっかけは何かあるんでしょうか?

これも私自身の「こういうものがあったらいいのに」という体験がきっかけです。数年前に子どもを出産後、なかなか町の様子がわからなくて、「子連れで行けるお店は、今日混んでいるのかな」とか「買い物に行くお店をどうやって選ぼうか」と迷うことが多くて……。既存のSNSやマップの口コミには、固定された情報は出てくるものの、タイムリーに「今、何が起きているか」はわからないのが、少しもどかしかったんですね。

——「がんばって子連れでお店まで行ったら臨時休業していた……」みたいなことって、ありますもんね。

そうなんです。近所のイベントやお店での取り組みなども、タイムリーに情報が拾えたらもっと行きやすくなりますよね。実際、中目黒のエリアマネジメントをしている方と組んで「今日の街を可視化する」というマップを作成していて、街や人の動きをデータ収集できることがメリットになっています。

——「現実版メタバース」みたいな感じで、たしかに見ているだけで近所に出かけたくなりそうです。

まさに、家にいながら現実世界を可視化できるのが楽しいなと思っています。今後は鉄道会社とも連携して、沿線上の回遊につながるようなマップも作っていきたいと思っているんです。

——今までの事業とはまったく違うものを生み出すのは、大変だったのではと思います。

産後だったのでなかなか六郷BASEに来ることもできなかったのですが、毎月の面談をリモート対応していただいて助かりました。アイデアの段階から話を聞いてくださったことで、すごく考えがまとまっていったんですよね。「次の面談までに企画書を書いてきます」と前に進めるきっかけにもなりました。

また、LocPicのリリース後に「まちづくり関係者が来るイベントがあるから、ピッチしにおいでよ」とお声がけいただいて、六郷BASE内外の方々とつながりができたのもよかったです。今は、六郷BASEのIM(インキュベーションマネージャー)や入居者さんの会社で試験的導入をさせてもらっています。

——今後の展開が、ますます楽しみですね!

とてもワクワクしています。製造業サポートもLocPicも、私自身や関わる方々がワクワクすることを大事にしたいんです。「製造業の状況を良くしたい」という使命感も大切ですが、やっぱり「やらなきゃ」だけでは人は集まらないとも思っていて。実際、お付き合いのある町工場のみなさんは「こういう仕事してみたいんだよね」「開発してみたいんだよね」と、すごくキラキラされています。業界にいる方々が楽しんでいるほどに人が寄ってくると思っているので、これからも「ワクワクする」という気持ちを大切に伴走していきたいなと思っています。

——お話を聞いていて、こちらまでワクワクしてきました。これからも応援しています!


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