ROKUGO BASE Magazine
大田区で始めるサステナブルビジネス。人と環境に優しい社会にするためにできること。
六郷BASEに入居する起業家にインタビュー!
今回は、スリランカのオーガニック製品の輸入販売を行う M DASANAYAKA 代表の吉行麻里子さんにお話を伺いました。
吉行さんは、2021年10月から六郷BASEに入居中。着実に準備を重ね、翌年1月にオーガニック製品ブランド「M DASANAYAKA」を設立しました。人と環境に優しいスリランカの良いものを、自身と同世代の働く30代女性に届けるために日々奮闘中です。
起業家プロフィール
吉行 麻里子氏
1985生まれ。大田区出身。
高校時代より音楽活動をしており、ジャズシンガーの国際協力活動に心を惹かれ、貧困問題や環境問題など国際問題に興味を持つ。大学卒業後は、約15年間輸入食品販売会社やレストラン、農業を経験。スリランカ人のパートナーに出会い、自分の本当にやりたいことを叶えるために起業する。
HP:https://mdasanayaka.com/
Instagram:https://www.instagram.com/mariko_yoshiyuki_organiclife/
“地球に優しい”事業を始めたきっかけ
-吉行さんのこれまでのご経歴を教えてください。
学生時代から環境問題には関心があり、東京農業大学に進学しました。国際系の学部だったので、いろんな国の人の価値観に触れることが多かったです。大学で学ぶ中で「農業が環境・貧困問題を解決できる」ということが分かり、いつか自分で取り組んでみたいと思っていました。
卒業後は、在学中からアルバイトをしていた輸入食品会社に就職しました。企業理念として「地球に良いことしてる?」を掲げていたことに共感したんです。
就職してから数年後に国産ワイン事業が立ち上がることになり、私もメンバーとして参加しました。その際、ぶどうの生産量を安定化させるための農薬を、防護服を着て身を守りながら撒くスタッフの姿を見て、「人体に影響がある薬品を利用してまで生産せざるを得ない現実」に違和感を感じました。環境はもちろん、人にも優しい農業って何だろう。命をいただくことの大切さ。そんな問いや想いが強くなりました。
-環境問題について勉強したいと思った、そもそものきっかけは何でしょうか?
ディー・ディー・ブリッジウォーターというジャズシンガーがいて、その方が国連食糧農業機関の大使をしているんです。アフリカの子どもたちのために活動する姿がすごくかっこいいなぁって思って。それがきっかけで勉強を始めました。
-いよいよ自分でやってみよう(起業しよう)と思ったきっかけはありますか?
輸入食品会社を退職後にレストランで働きました。そこではオーガニック食材やナチュールワインを扱っており、食品についてさらに理解を深めることができました。
ですが、体調を崩してしまって。そんな時、スリランカ人のパートナーが私に言ってくれた「人の会社で頑張り過ぎて体調を崩すくらいなら、自分でやりたいことをやった方がいいんじゃないの」この一言が背中を押してくれました。
スリランカのオーガニック製品を日本へ
-輸入先としてスリランカを選んだのはなぜでしょうか?
パートナーと出会ったのは日本だったので、そもそも私はスリランカに行ったことがありません。ですが、知らないままにするのは好きじゃないのでスリランカについて調べました。そうすると、スリランカは日本よりも有機農業の栽培面積が広く、オーガニック紅茶などは日本以外の各国に輸出されているということが分かりました。私が知らなかっただけで、スリランカには環境に優しい良いものがたくさんあるんですよね。
パートナーと結婚したことで日本とスリランカ両方がホームタウンとなった今、「スリランカの良いものを日本にも届ける」ことを2人の生業としてやっていこうと決めました。
-現在はどのような商品を取り扱っていますか?
ココナッツから作られたブラシを販売しています。ブラシはプラスチック不使用で生分解性、堆肥化可能なので「地球に還るココナッツブラシ」という名称で販売しています。現地の職人が丁寧にハンドメイドで作っており、彼らの提示する価格で購入しています。なので販売価格は決して安くはないですが、良いものを適正な価格で提供したいという想いが強いです。
-海外取引の難しさはありますか?
日本との文化の違いを感じるシーンはたくさんあります。例えば満月の日は仕事がお休みだったりとか。インフラもあまり整っていないので、停電もしょっちゅう起こります。その度に連絡が途絶えるので、物事をスピーディーに進められないのが大変です。
また、現在スリランカは国内情勢が非常に不安定で、大統領が「破産宣言」をしたことも記憶に新しいと思います。生活物資が不足しており、国民は満足に仕事もできない状況です。少しでも外貨を入れるお手伝いがしたくて、急遽現地の籠バッグを購入し、国内で販売するといったことを微力ながら行っています。
-前職までの経験が活きていると感じる部分はありますか?
オーガニックというテーマより、営業や販売、個数管理、売上管理をしてきた実務経験が活きているなと感じています。良い商品であっても、実際に買ってもらうにはスキルや経験が必要なので、15年余りの店長経験を活かすことができて良かったです。
-Instagramの発信を熱心にされている印象です。意識していることはありますか?
「私のことを知らない人」はどんなに良い商品であっても買ってくれないんですよね。どんな人がどんな想いで売っているのかを伝えることで、そこに共感してくれた方が買ってくれるという流れが実際に生まれています。①お役立ち情報、②ライフスタイル、③プライベートの3つに分類してバランス良く発信するように心がけています。
大田区でビジネスをすること
-吉行さんは大田区ご出身ですよね。
そうなんです。仕事の都合で北海道や横浜方面に住んだことがありますが、結局大田区に戻って来ました(笑)
-大田区のどんなところが好きですか?
商店街が好きなんです。みんなが商売をしている感じや、人の温かみを感じられる場所だと思います。
先日、池上本門寺の朝市に出店させていただいて、そこでもたくさんの方々とコミュニケーションすることができました。元々ターゲットにしている「働く30代女性」以外の年齢層の方にもたくさんお会いすることができ、スリランカの状況や、製品の良さを直接お伝えすると、皆さんいいね!と言って購入してくださいました。こういったところにも大田区の人の良さを感じますね。
-大田区での起業にこだわったのはなぜでしょうか?
自分が生まれ育った地域に貢献したい気持ちが強いです。また、大田区にはオーガニック文化を発信していく場所としてのポテンシャルもあると思っています。
各国のオーガニック占有地を見ても、日本はまだまだ少ないため、諸外国に比べてオーガニックという文化が浸透していない現状があります。今はコロナ禍で観光が止まっていますが、今後回復したらまた多くの外国人が来日するようになるでしょう。そうなった時、オーガニックなお店がたくさんあったらいいですよね。大田区には羽田空港があるし、ホテルも増えているし、観光名所もあります。外国人観光客を受け入れる場所でオーガニックな事業をやることで、大田区に貢献できると思っています。
吉行さんの夢
-今後の目標を聞かせてください。
まずは全ての都道府県に卸売販売店を置くことが目標です。今はECが主流ですが、輸送にもCO2排出の問題があります。個々人に発送するより、各都道府県の販売店にまとめて発送し、そこで購入してもらうことでCO2排出量を削減できます。そのためにも、私と同じ想いでやられている店舗を探して広めていきたいです。
六郷BASEを卒業する頃には、大田区の商店街に店舗を持ちたい!でもそれもあくまで通過点です。私が店長として1つのお店を守っていくというより、私の想いに共感してくれる従業員を雇用して、お店を任せていきたいです。
ゆくゆくは、スリランカにも会社を作りたいと考えています。スリランカは、国内情勢が悪化するよりずっと以前から貧しい国です。現在、商品パッケージのデザインを現地の女性デザイナーにお任せしているのですが、こういう人を育てていかないと貧困は終わらないんじゃないかと思っています。スリランカの労働事情を知ってしまった以上、見て見ぬふりはできない。お金を寄付するのは簡単ですが、それは一瞬のことで、全くサステナブルじゃないですよね。そうではなくて、お仕事をお願いして働き方を教育していくことで、経済的に自立する人を増やしていきたいです。
起業を迷っている人にメッセージ
-吉行さんのようにサステナブルな領域での起業に挑戦したい方はたくさんいます。アドバイスをお願いします!
自分もそうでしたが、やりたいことがあって悩んでいる人は、いろんなことが頭を巡ってぐちゃぐちゃになっていると思います。そういう時は紙に言葉を書き出しまくって整理しました。
あと、あまり「やる気」を出さないようにしています。昔、上司から『やる気はいらないから、本気でやって』と言われたことがあるんです。その言葉もあって、自分で決めたことなら本気で当たり前のこととしてやるようにしています。自分に恥ずかしくないように生きたいです。
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吉行さんが繰り返し仰っていた「知ってしまったら見て見ぬふりはできない」という言葉に、吉行さんの責任感と、新しくホームタウンとなったスリランカへの大きな愛情を感じました。スリランカは大変な国難を迎えていますが、吉行さんの事業をきっかけに、多くの方にスリランカについて知っていただけることを願っています。
オーガニック紅茶、コーヒーなど、今後の新商品が楽しみです!(コミュニティマネージャー/太田)