ROKUGO BASE Magazine
【起業家インタビュー】素材や技術がもつ“世界観”を魅せる、新しい文化継承の形。/株式会社HONOKA.lab・原田 真之介さん、横山 翔一さん
「大田区(ココ)でつながり、ともに進もう」というキャッチコピーを掲げ、歩みを進めてきた六郷BASE。大田区にあるさまざまな資源と六郷BASEに入居する起業家が、つながることで相乗効果を生み、事業が前に進んでいく——。そのような事例をご紹介していくのが、六郷BASEの入居者へのインタビュー連載です。
今回お話を伺ったのは、株式会社HONOKA.labの原田 真之介さんと横山 翔一さんのおふたり。有志のデザイナーが集まったあるプロジェクトからスタートしたHONOKA.lab。彼らのプロジェクトに共通している大切な軸や、法人化を経て今後やってみたいことなどを伺っていきます。
「アイデンティティ」と「ストーリー」を探して

——最初に、HONOKA.labでやられていることを改めて伺ってもいいでしょうか?
原田:僕たちはもともと、プロダクトなどの立体物を扱うデザイナーの集まりです。ただ、一般的なデザイン事務所と違うところは、形を考えるだけでなく、それ以前の「素材や製法の開発」まで行うこと。特に、“感性的な価値”を大切にした意匠素材をつくることを得意としています。
——“感性的な価値”のある素材、ですか?
原田:例えば、ガラスの「寒さを凌ぐ」は機能的な部分ですが、「光が反射してきれいだと感じる」のは意匠的と言えます。見た目が美しかったり心地よかったりする、感性に働きかける素材を生み出そうとしています。そして、その魅力が一番現れる製法も合わせて開発することが多いです。
——機能性だけでなく、見ている人の感性が揺さぶられる部分を大切にしているのはデザイナーさんならではの視点だと思いました。例えば、これまでに扱ったのは、どのような素材や製法なんでしょう?
横山:2025年末に発表した最新のものは、京都の繊維企業さんが舞台などで使われる緞帳(どんちょう)を作るときの端材として出る特色の糸を活用して、新しい見せ方を考えました。「String_Surface_Solid(線・面・塊)」と名付け、繊維が持つ魅力を三段階に分けて表現したんです。面や塊にする際、京都にまつわる八つ橋や寒天などの天然由来の素材を媒体にして一緒にプレスするという製法を開発しました。

原田:繊維って水分や媒材が染み込みやすいんですね。それを固めることができれば、袖の途中から固まっている洋服ができたりして面白いなと。端材としてゴミになってしまう糸に、段階ごとに違う硬さを与える研究をしました。
——とても面白いです。ただアップサイクルするのではなく、繊維という素材が持つ吸水性や柔軟性などを活かしているんですね。
横山:僕らは扱う素材や製法、最後のアウトプットまで、ちゃんと美しいストーリーとして成り立っているかも重要視しています。HONOKA.labの原点となった畳のプロジェクトも素材本来の魅力や文化を踏襲してデザインに落とし込むことを意識しましたし、アクアクララさんと立ち上げた「TRACE OF WATER(水の痕跡)」というウォーターボトルをアップサイクルしたプロジェクトも、そうです。
原田:ウォーターサーバーのボトルって、普通のペットボトルよりもずっと長い間、水と触れ合っているんですね。特にアクアクララさんのボトルは6年間もリユースされるので、本当に長期間です。本来、ボトルの素材であるポリカーボネートは吸水するものではないんですけど、アクアクララさんの廃棄されるボトルを調べたら湿気を含んでいることがわかったんです。そこに熱を加えるとその樹脂の中で発泡することもわかり、僕らはこの泡に素材の“アイデンティティ”があるんだと定義しました。
——素材のアイデンティティ、ですか。
原田:長い間、おいしい水に触れ合うウォーターボトルだからこそできる泡は、アクアクララさんのおいしい水そのものを連想させますよね。このアイデンティティを最も魅力的に見せるために研究を重ね、最終的には樹脂をさまざまな粒度のタイルに生まれ変わらせることにしました。建材として再利用することで、さらに長期間、生活に寄り添っていくというストーリーになっています。

——単純に捨てられてしまうものを再利用するだけでなく、発想が独特で、どれも驚かされますね。
原田:今までデザイナーとして請け負ってきた領域よりも、HONOKA.labではかなり広い範囲を考えている感覚がありますね。出会った素材や技術に対して「あなたの魅力はここなんじゃないか」と一緒に探り、トレードマークとして磨き上げていくようなことをしているんだと思います。
なくなりかける文化を継承したい
——「素材や技術が持つストーリーを見つけて伝えていく」というHONOKA.labならではの形には、どのようにたどり着いたのですか?
原田:最初のきっかけになったのは、HONOKA.labの始まりとなった畳のプロジェクト「TATAMI ReFAB PROJECT」ですね。畳の需要が年々減っていくなかで、畳職人さんも材料の「い草」を作る農家さんも減り、国産の畳産業自体がなくなってしまうかもしれない……という危機感を持って、横山がもともと個人的に進めていたものです。
横山:従来の形では需要が少ないかもしれないけれど、現代社会に合わせて変化させることができれば、文化自体は残せるんじゃないか?という思いで研究を続けていて……。そこで、畳の材料であるイグサを樹脂に含ませて、3Dプリンターで紐状にして編み込むという手法を研究していました。畳も本来、い草を“編んで”作るもの。だからこそ、プロジェクトでも“編む”という手法にこだわり、畳の魅力を再定義するようなものを目指しました。

——素材や技術へのリスペクトを感じます。とても新しいものなのに、どこか畳の懐かしさを感じさせるプロダクトですよね。
原田:産地のみなさんや職人さん、素材に関わってきた方々が大事にしてきたものを、僕たちも大事にしたいんです。その文化を取り巻く技術も人も大切にしながら、新しい形でアウトプットしていく……僕らは「文化としてのサステナビリティ」という言葉で表現しています。
横山:とはいえ、最初はそこまで言語化できていたわけではなく、僕たちもイタリアで開催される「サテリテアワード」に出展するために集まっただけでした。それがアワードを受賞したことで自信にもなりましたし、このチームでもっと大きなことができるんじゃないか、と思ったところがありますね。伝統産業に限らず、この社会ではどんどん新しい文化が生まれていくので、僕らが「TATAMI ReFAB PROJECT」で実現したことは他にも活かせるんじゃないかと。

——今回限りではなく、今後もチームで活動していこうと。
原田:僕はもともと「サテリテアワード」に個人でも出展していたこともあるんですが、やっぱりチームだとできることの範囲が広いなと感じました。同じデザイナーとはいえ、みんな個性的で得意分野もそれぞれ。足りないところを補い合いながら、クオリティの高いものが出来上がっていくのは幸せを感じます。完成したものを見ると「ああ、これは1人ではできなかったな」と実感するんですよ。
横山:僕もサテリテからの帰りの飛行機で「これは何か大きいことができそうだ」と感じたのを覚えています。実際、アワードを受賞したことでさまざまな企業からの依頼が増えてきたこともあり、法人化に至ったという流れです。
特殊な製法を編み出すからこそ、連携が必要
——六郷BASEに入居された理由も、教えてもらえますか?
横山:知り合いから紹介してもらい、見学に来たときにスタッフのみなさんの人柄がいいなと。コミュニケーションが取りやすい方ばかりで、打ち解けやすいと感じました。あと、僕らは経営に関しては初心者だったので、企業経営に関して気軽に相談しやすい雰囲気だったのも魅力でした。
原田:先日も「営業が課題だ」という相談をしたら、知見のある方をご紹介いただけることになったり。株や財務、営業などの細かいところも相談させてもらえて助かっています。
——おふたりは、他の入居者のみなさんともよくお話しされている印象です。
原田:フランクな方が多いですよね。みなさん「こういう素材を再利用できないか」と相談してくださいますし、僕らからも何かあれば相談しやすくて嬉しいです。例えば、⾷品廃棄物から新素材を生み出すfabulaさんとは共通した思いも多く、一緒にトークイベントに登壇させていただいたこともあります。

——すばらしいですね。入居者さんだけでなく、大田区にはものづくりをしている方が多いので、協力したい企業は多そうです。
横山:僕たちとしても、町工場との連携には期待しているところです。素材を成形する際には必ず金型が必要になるので、大田区の金属加工業者さんと一緒に何かできたらいいなと。特に、僕らは特殊な素材の使い方や製造方法を考えるところから始めるので、そういったものを真摯に受け止めてくれる技術力の高い方々がいるのは心強いです。そもそも、僕たちみんな金属加工が好きなんですよね。
——金属加工が?
横山:そう、金属加工という分野そのものに興味があって。金属の端材などを使って作品を作って、また海外の展示会などに出展できたら楽しそうだなと考えています。それが結果的に、大田区や町工場にとっても貢献できるようなものになったらいいですよね。
誰かが目指す世界を、一緒に“宣言”する
——いろいろ夢が広がりますね。HONOKA.labとして、今後やってみたいことはありますか?
原田:今まではPRとしては多くの人に知ってもらえているんですけど、実際にたくさん売れるヒット商品を作りたいですね。僕らのプロジェクトの仕組みとして、本来は廃棄されてしまう素材が新しい文化になり、産地や職人さんたちにちゃんとお金が入っていくことを目的としているので。サステナブルな文化貢献のためにも、より社会実装につながる商品を生み出したいですね。
——今はまだ「この素材で、こんなことができるんだ!」という驚きを社会に与えているフェーズ、という感じでしょうか。
原田:そうですね。どのプロジェクトも最初はインパクトのあるものをアートピースのように表現して伝えることを意識してきました。少しずつ社会実装の話が進んでいるものもありますが、もっと身近に使えるものへの転換を増やしていけるといいのかなと思います。
——横山さんはいかがですか?
横山:個人的には「材料」としても販売してみたいです。ペレットという樹脂の粒状のものだったり、3Dプリンター用のフィラメントだったり。材料としても購入してもらえるようになれば、結果的に原田が言ったように文化貢献につながると思っています。

——お話を伺って、目的が一貫していると感じました。
原田:僕らのプロジェクトは、どうしてもビジュアルが先行してみなさんの目に触れるので、一見それが何につながっているのかわかりづらいんですよね。作品やプロダクトを作るのが目的だと思われたり、ただ新しいものを作ろうとしているように思われたり……。でも、我々の根底にあるのは「世界観の提示」なんです。
一般的なブランディングやコンサルティングでは言葉やビジュアルを使って魅力を定義していくと思いますが、僕らの場合は具体的なプロダクトが先にあります。実際に物を作って見せることによって、「この企業の魅力はここにあり、彼らがやろうとしているのはこういうことだ」という世界観を見せるんです。
実際、アクアクララさんとのプロジェクトなども、まだ社会に対して何か利益をもたらしているわけではありません。でも、「TRACE OF WATER」は「私たちはウォーターボトルを生まれ変わらせていく」という“宣言”になります。それで仲間を集めたり、道標として前に進むことができるんじゃないかと思っています。

横山:それぞれの企業や産地が持っている素材や技術を再定義して、唯一無二の世界観を生み出す感じですよね。それ自体がヒット商品として売れてくれるのも大事ですが、素材や技術の魅力が人々に届くことで、みなさんが大切にしている“アイデンティティ”を示すことができたらいいなと。それが僕たちの得意分野であり、できることなんだと思います。
——自社が持っているものの再定義や、これからのビジョンを可視化するのは、自分たちでは難しいと思うので、HONOKA.labが一緒に考えてくれるのは心強いですね。これからのご活躍も楽しみにしています!


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