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ROKUGO BASE Magazine

【起業家インタビュー】日本のものづくりを宇宙へ、新産業への挑戦/株式会社CETACEA・上野健弥さん

2026.09.29 REPORT
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「大田区(ココ)でつながり、ともに進もう」というキャッチコピーを掲げ、歩みを進めてきた六郷BASE。大田区にあるさまざまな資源と六郷BASEに入居する起業家が、つながることで相乗効果を生み、事業が前に進んでいく——。そのような事例をご紹介していくのが、六郷BASEの入居者へのインタビュー連載です。

今回は、小型衛星向けの推進システムを開発する、株式会社CETACEA(セタシア)の上野健弥さんにお話を伺いました。車や航空機のエンジン、月着陸船、ロボットなど幅広い分野でエンジニアとしてものづくりを続けてきた上野さんが、宇宙という未知の世界に向かうことになった理由とは、なんだったのでしょうか?

人間には難しい環境や作業もロボットなら

——セタシアが開発を進める「軌道上サービスロボット衛星」とは、どのようなものでしょうか?

これまで、衛星は一度打ち上げたら最後、壊れたら使い捨てのような状態だったんですね。それが技術の発展とともに「別の衛星で近づいて、修理や交換ができるかもしれない」という可能性が出てきて、私たちはその修理用の衛星向けの推進システムを開発しています。

——今までは打ち上げて軌道に乗せるだけだった衛星を、さらに軌道上で向きを変えたり前進させたりするわけですね。

そうです。さらに、近づいた先でロボットアームなどを使って修理や交換ができるようになることを目指して、いくつかの技術を複合的に研究開発しています。現在はまず、「超小型衛星」と言われる小さなものから実用化を目指している段階ですね。世界中で少しずつ試験が進んでいる分野ですが、まだまだ未開発の分野と言えます。

——上野さんは大学でロボット工学を学び、エンジニアとしてさまざまな乗り物のエンジンなどを作られてきています。そういった経歴が、今の事業につながっているのでしょうか?

車、航空機、月着陸船 、ロボットといった、これまでの経験が活かせる内容だとは感じていますね。ただ、僕たちの持つ技術は、宇宙でしか使えないというわけではないので、地上でもご依頼があれば目的に応じたロボットを開発しています。例えば、水圧の高い深海など人間には入れないところでも、ロボットなら作業できますから。

ものづくりで、誰かの役に立てる場所へ

——「ロボットを作る」というのがあまりイメージできないのですが、上野さんご自身はどの部分を担っているのですか?

お話を伺いながら設計は僕自身がおこない、加工は外部にお願いしています。最後の組み立ても僕が試して、ちゃんと動くことを確認してお渡しすることが多いです。

——設計も組み立ても、上野さんがやられるんですね。

はい。開発中の推進システムも、今は試作を繰り返している状態。同じ「動いた」という表現でも、1回と1万回では全然違います。100回試したら100回、必ず動くものを作らないといけません。何億円もかけて衛星を打ち上げた末に「動きませんでした」では困るので、確実に必要な動きができるようにしたいんです。

——パッとやって「できた!」ではない、長期的な視点が必要な事業ですね。

試作には時間もお金もかかりますから、今は試作期間にどのようにビジネスを続けていくのか、どのようなスケジュールで開発を進めるのか、といった視点で事業を進めています。

——上野さんのご経歴を見ると、車や航空機などから徐々に、宇宙やロボットという今の事業に近づかれてきたように見えます。

もともとは、ものづくりが好きでロボット工学を学んでいたんです。小さい頃から、モーターで走る自動車の模型を作ったりしていました。ものづくりで誰かの役に立てたらという思いが、ロボットやエンジンといった進路に続いていきましたね。ご縁があって車のエンジンに6年ほど携わったのち、航空機のジェットエンジンの業界に転職しました。

——車から航空機、そしてその後は月着陸船と、どんどん規模感が大きくなっていますね。

車のエンジンのことがわかってきた頃、何か新しいことにチャレンジしたくなって。国内のみならず、世界的な規模で仕事をしたいと思ったときに選んだのが航空機でした。ただ、大型機のエンジンもまた、業界としては狭い部分もあるんです。ほとんどアメリカやイギリスがシェアを握っており、なかなか日本から食い込んでいくのは難しいと感じていました。

——そこで、宇宙へ。

ええ、宇宙はまだ航空業界のようにシェアや技術の偏りがなく、できることがありそうだと思いました。勤めていた会社でセタシアの事業の前身となる技術を開発していましたが、会社の方向転換により続けることが難しくなったために起業を選んだ、という経緯です。起業のことは何もわからなかったですが、ビジネスチャンスがあるのに辞めてしまうのはもったいないな、と。

未知の世界で、産業をつくる挑戦がしたい

——かなり長期的な事業だと伺いましたが、そこまで覚悟を持って取り組むことができるのはなぜだと思いますか?

一つは、エンジニアとしての挑戦が楽しいということ。他の人がまだやっていない、難易度の高いものに挑戦してみたいという気持ちがずっとあります。鯨類の学名に由来する社名「CETACEA」も、かつて陸上で暮らしていた彼らが、海という未知の世界へ進出していった歴史からヒントを得ています。 

そしてもう一つが、日本の新たな産業を作りたいという思いですね。時代によって日本のメイン産業は、造船や車などへ移り変わってきましたが、今は他国の勢いもあって日本の主要産業と呼べるものが減っています。だからこそ、まだビジネスチャンスがある宇宙で、新しい産業を作ることにチャレンジしたいと思っています。

——日本全体の産業を考えると、次は宇宙ではないか、ということですね。

航空業界にいた頃、仕事でイギリスを訪れる機会がありました。もともと産業革命が始まったイギリスの製造業は景気がよかったはずですが、訪れたイギリスの町工場は廃れているところも多くて……。若い人がおらず、おじいちゃんたちが「自分の代で終わりだ」と言う姿を見て、これってもしかしたら日本の未来かもしれないと思ったんです。

今は車の部品を作る仕事があっても、時代の変化によって、その仕事がなくなってしまう可能性があります。でも、日本に新しい産業があれば、そこでまた次の仕事を見つけることができるかもしれない。そんな未来をつくれたらと考えています。 

町工場のある風景を残すために、できることを

——もともとは都内で起業されて、六郷BASEには2026年3月から入居していますね。どのような経緯で、移転を決めたのでしょう?

自宅が都内にあったので近くでオフィスも借りていたんですが、都内でものづくりをする難しさもありました。僕たちは、実際に手を動かして組み立てたり、試作品を動かしたりすることも多いので、ある程度の広さがあり、騒音などを気にせず作業できる環境が必要でした。そこで、 もともと製造業界で存在を知っていた大田区に移ることにしました。

住まいも大田区に引っ越して、今はアクセスの良さも感じていますね。受託案件の開発のために各地を飛び回ることが増えたのですが、飛行機や新幹線にもすぐに乗れるのでとても便利です。

——六郷BASEの使い心地はいかがですか?

とても居心地がよくて、出張以外の時間は基本的にずっと使わせてもらっています。それから、最近は試作室も使っています。今までだと組み立ての際に「もうちょっと穴が大きければ……」と思ったときに、やっぱり騒音や場所が気になっていたんですが、今はすぐにちょっとした加工ができるのがありがたいです。

——まだ入られて半年ほどですが、スタッフや他の入居者のみなさんとも少しずつ交流されているのでしょうか?

そうですね。やはり自分たちで部屋を借りるだけだとメンバー同士のみのコミュニケーションになってしまいますが、六郷BASEではスタッフさんや他の入居者の方々と雑談できるのがいいですね。いい意味で、引きこもらずに済んでいます(笑)。特に六郷BASEは、宇宙関連の事業をされている方が多いので、今後なにかコラボレーションしたり、お話しする機会があれば嬉しいなと思います。

——大田区としても、宇宙関係の事業にはとても興味を持っていると聞いています。今後もいろいろな出会いがあるといいなと私たちも思っているところです。

入居をきっかけに大田区に住み始めて、町を歩けば工場が動いている風景がとてもいいなと思っているんです。だからこそ、この活気がある風景が続いてほしい、という気持ちがあります。

——六郷BASEでも、一生懸命サポートさせていただきます!本日はありがとうございました!


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