ROKUGO BASE Magazine
【イベントレポート】会社員から経営者へ。事業承継という起業のカタチ を開催しました
7月30日(木)、六郷BASEにてオンラインセミナー「会社員から経営者へ。事業承継という起業のカタチ」を開催しました。
「いつか起業してみたいけれど、どんな事業で起業すればいいのかわからない」「自分に経営なんてできるのだろうか」そんな漠然とした不安を抱える方は少なくありません。一方で、後継者が見つからず、姿を消そうとしている事業も数多く存在します。今回のセミナーでは、ゼロから立ち上げる以外の起業のかたち、「事業承継」という選択について、実際に会社員から経営者になった方のリアルな体験談をお届けしました。
ご登壇いただいたのは、六郷BASEの入居者であり、フルーツの定期宅配サービス「果物の達人」を運営するvictoriafruit株式会社 代表取締役の原詩織さんです。
原さんに関する起業家インタビューはこちらから

事業承継という、起業のかたち
「果物の達人」は、大田市場で仕入れた旬のフルーツを原さん自身がセレクトし、毎月5〜6種類お届けするサブスクリプションサービス。
大田市場には全国の一流産地から毎日何千トンものフルーツや野菜が集まります。原さんはその中でもピラミッドの頂点にあたるとびきり美味しいものだけを厳選しているのだそう。
魚でいちばんいいものが築地・豊洲に集まるように、フルーツでいちばんいいものは大田に集まる。だからこそ届けられる美味しさがあるんだそうです。
また、いちごの食べ比べができる「超いちご箱」などのクラウドファンディングに5年連続で挑戦したり、フルーツの切り方を紹介するYouTube動画が登録者1,000人を超えたりと、「果物の達人」を軸にフルーツの魅力を伝える活動を幅広く展開されています。

なぜ、従業員の立場から「承継」を選んだのか
もともと原さんに、独立や起業への強い願望があったわけではなかったんだとか。
フルーツが好きで、その仕事に就けているだけで十分だったといいます。
当時、従業員として「果物の達人」の運営に携わっていた原さんは、あるきっかけからこのサービスの継続が難しくなるかもしれない状況に直面します。もし自分が離れれば、サービスそのものが終わってしまうかもしれない。「果物の達人」には、2015年のスタートから長く利用し続けてくれているお客様もいます。そのつながりを絶やしてしまうのは忍びない。それなら自分でやろう。そんな想いが、承継という決断につながりました。
会社員から経営者への転身は大きな決断ですが、原さんの場合、不安を感じている暇すらなかったといいます。動き出しがとにかく急で、「早く引き継がないとお客様に迷惑がかかる」という一心で、登記や各種手続きを一気に進めていきました。
経営者になって見えた、想像との違いとやりがい

経営者になって想像と違ったのは、まず「休みがない」こと。立ち上げ期は自分が頑張るしかないフェーズで、自由なイメージとは裏腹に、経理や事務も含めてやることは山積みです。一方で、働く人や環境を自分で選べるようになり、「働きやすくなった」という実感もあるといいます。
やりがいを感じるのは、もともとあった事業を自分らしく育てていけること。原さんはさまざまな工夫を重ねています。
そのひとつが、大田市場からの仕入れに加えて始めた産地直送品の取り扱い。 生産者の顔が見えることが産地直送ならではの魅力で、市場のフルーツも産直のフルーツも、それぞれの良さがある。フルーツ全体を、いろんな方面から好きになってもらいたい。そんな思いが根底にあるんだそう。
そして大切にしているのは、ただ果物を売るのではなく「フルーツの魅力を伝える」こと。届けるフルーツ一つひとつに、産地の背景や食べ方、保存方法、そして「どの順番で食べるといちばん美味しいか」まで記した「フルーツカード」を添えています。フルーツは熟度、つまり食べるタイミングが命。ベストな瞬間に味わってもらうための情報を、丁寧に届けています。
さらに、定期便のお客様には毎月、フルーツにまつわる読み物「くだもの便り」を自作して同封。季節の挨拶を添えた手紙も一通ずつ入れており、通販でありながらお客様との距離はとても近いものになっています。「いつも美味しい果物をありがとう」という電話やメールが日常的に届き、原さん自身が電話口に立つことも。売り手と買い手の関係でありながら、双方向のあたたかいコミュニケーションが生まれています。
こうした信頼関係は、仕入れの現場である大田市場でも同じ。紹介がなければ新規取引が難しい世界で、日頃の付き合いが良いフルーツにつながっていく。「自分が頑張らないと、いいものは食べてもらえない」。お客様に感動を届けたいという原さんの姿勢が、事業のすみずみに息づいています。
これから実現したいこと
原さんが描く未来のひとつが、フルーツとコーヒーを味わえるカフェ。
通販ではお客様が本当にベストなタイミングで食べられているか見えない、というもどかしさを、「その場で最高の状態のフルーツを味わってもらえる場所」で解消したいといいます。
もうひとつが、羽田空港での出店です。以前、第3ターミナル国際線エリアで4か月間フルーツを販売する実証実験を行ったところ、外国人観光客に大好評だったそう。大田市場で一番いいものが集まり、そこから羽田空港まではわずか15分。世界中の人が日本で過ごす最後の場所で美味しいフルーツを味わい、「日本っていい国だった」と思って帰ってほしい。大田区ならではの、夢のある構想です。

おわりに
事業承継は、後継者不足に悩む事業に新たな担い手をもたらすと同時に、「起業したいけれど何から始めればいいかわからない」という人にとっての現実的な選択肢でもあります。原さんの歩みは、好きなことへの情熱が、承継という起業のかたちを通して一つの事業を守り、育てていく力になることを教えてくれました。
六郷BASEでは、今後もこうしたセミナーや交流の場を通じて、起業家をはじめとする皆さんそれぞれの事業や仕事が前に進むきっかけをつくっていきます。

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